自転車の盗難は夏と深夜に集中する。研究でわかった狙われやすい場所と季節

自転車の鍵はかけている。それでも盗まれるときは盗まれます。どこに・いつ停めるかによって、盗まれやすさが変わることが、位置情報を使った研究からわかってきました。鍵のかけ方だけでなく、「場所」と「季節・時間」という、もう一つの視点を知っておくと、同じ手間でもう一段リスクを下げられます。
3行でわかる
- ロンドンの研究では、自転車の盗難は夏に春より最大93%多く、冬は最大33%少なくなっていました。
- アムステルダムで盗難自転車を追跡した研究では、盗難は月曜・水曜の深夜、特に午前3時ごろに多く発生していました。
- 盗まれた自転車の多くは地元から離れず、2割弱は転売の知られた場所を経由していました。
01 犯罪者側から見ると自転車泥棒は何を見て選ぶ?
犯罪学には「犯罪の機会とは、犯罪の利益がコストを上回る状況」という考え方があります。持ち去りやすく、人目が少なく、すぐ処分できる自転車や場所ほど選ばれやすいとされています。
環境犯罪学のレビュー論文は、犯罪の機会をこう定義しています。「犯罪の機会とは、犯罪をすることの利益がコストを上回るあらゆる状況である」[3]。自転車泥棒にとっての「コスト」は、見つかる危険と手間、「利益」は自転車そのものと、それを現金に換えられる見込みです。
アムステルダムで、盗難が多い場所に追跡装置付きの自転車を仕掛けた研究では、盗難は月曜と水曜の夜に多く、時間帯では午前3時ごろに集中していました[2]。人通りが少なく、見られる危険が低い時間帯が選ばれていることがうかがえます。盗む側にとっての「処分のしやすさ」については、質屋や消費者金融の店の近くで自転車盗難が多いというロンドンの分析が参考になります。この点は、自転車や車を盗まれたら、何をすればいいかでも紹介しました。
02 研究と統計でわかっていること季節や場所で盗難リスクはどう変わる?
自転車の盗難は夏に増え、冬に減る傾向があります。盗難は地元で起きることが多く、特定の店や施設の近くでリスクが上下することもわかっています。
Mburu & Helbich(2016)[1]
ロンドン中心部の道路区間ごとに自転車盗難を分析すると、夏の盗難発生率は春より約74〜93%高く、冬は春より約20〜33%低くなっていました。駅・大学・空き家・自転車の駐輪スタンドの近くでは盗難リスクが高い一方、バーの近くでは約12%低く、街路樹のある道路でもやや低くなっていました。
対象: ロンドン51,216道路区間・2013年5月〜2016年4月に起きた盗難36,987件 / 限界: 相関関係を分析したものであり、因果関係を証明するものではありません。ロンドン特有の結果である可能性もあります。
Venverloo ら(2023)[2]
GPS発信機を付けた中古自転車100台をアムステルダムの盗難多発地点に置き、半年間追跡した研究です。70台が盗まれ、そのうち2台を除くほぼ全てが市内を出ずに移動していました。2割弱(12台)は転売で知られる場所を経由し、3〜6台は中古自転車店で通常の販売のような動きを見せました。
対象: アムステルダムで盗まれた自転車70台・2021年6月〜11月 / 限界: 追跡装置を外されるなど、より組織的な窃盗ほど追跡から外れた可能性があり、実際の広がりはこれより大きいかもしれません。
2つの研究を合わせると、自転車の盗難は「利用が増える季節」「人目が少ない時間」「処分しやすい場所の近く」で起きやすいという像が見えてきます。鍵をかけることに加えて、いつ・どこに停めるかを意識する余地があるということです。
03 お金をかけずに今日からできること今日からできる対策は?
停める場所と時間帯を見直すこと、鍵を2種類使うこと、季節の変わり目に習慣を更新することが、お金をかけずにできる対策です。
停める場所を見直す
質屋・消費者金融・使われていない建物・駅から離れた場所を避け、できれば人の出入りがある店先や、管理された駐輪場を選びます。
所要 5分
深夜に停めっぱなしにしない
研究では、月曜・水曜の深夜、特に午前3時ごろに盗難が多く見られました。可能なら夜間は屋内や管理された場所に移し、外に出しっぱなしにする時間を減らします。
所要 習慣化
夏場は特に鍵を見直す
利用が増える季節ほど被害も増えやすいとされています。U字ロックとワイヤーロックなど、種類の違う鍵を2つ併用すると、1つだけより時間がかかります。鍵をかけ忘れがちな人は自転車盗難の多くは無施錠も参考にしてください。
所要 1分
防犯登録と車体番号を控えておく
盗まれたあと、質屋や中古店で見つかったときに持ち主だと示す手がかりになります。番号は購入時にスマホで撮っておくと、すぐ確認できます。
所要 5分
04 習慣にするコツ続けるコツは?
季節の変わり目に、駐輪場所と鍵の種類を見直す日を決めておくと、習慣として続けやすくなります。
- 6月ごろと12月ごろ、季節が変わるタイミングで「いつもの駐輪場所」を見直す。夏は特に短時間でも鍵を2つかける。
- 駅前や繁華街など、長時間停める場所ほど、管理された駐輪場の利用を優先する。
- 防犯登録番号・車体番号・購入時の写真は、盗まれる前にスマホへ保存しておく。盗まれたあとの手続きは自転車や車を盗まれたら、何をすればいいかで紹介しています。
05よくある質問
駅の近くに停めるのは避けたほうがいいですか?
駅そのものが悪いわけではありません。ロンドンの研究では、駅の近くで盗難リスクが高い傾向が確認されています。利用客が多く人目にはつきやすい一方で、短時間だけ無施錠で置かれる自転車が多いことが関係していると考えられます。可能なら管理された駐輪場を使い、鍵を二重にすることをおすすめします。
季節による違いは日本でも同じように起きますか?
紹介した研究はロンドンとアムステルダムのデータなので、日本にそのまま当てはまるとは限りません。ただ、自転車の利用が増える時期に盗難の機会も増えるという考え方は、特定の国だけに限った話ではないとされています。季節の変わり目に駐輪の習慣を見直す価値はあります。
出典
- Mburu, L.W., & Helbich, M. (2016). Environmental Risk Factors influencing Bicycle Theft: A Spatial Analysis in London, UK. PLOS ONE, 11(9), e0163354. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5028062/
- Venverloo, T., Duarte, F., Benson, T., Leoni, P., Hoogendoorn, S., & Ratti, C. (2023). Tracking stolen bikes in Amsterdam. PLOS ONE, 18(2), e0279906. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9931151/
- Farrell, G., & Tilley, N. (2026). Crime opportunity theory: the state of the art. Crime Science, 15(1), 12. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13194318/


