無料Wi-Fiは本当に危ない? 気をつけるのは「つないだ直後のログイン画面」

外出先の無料Wi-Fiは、ニュースや動画を見るくらいなら、以前ほど怖がらなくて大丈夫です。多くのサイトとアプリが通信を暗号化するようになったからです。気をつけたいのは、IDやパスワード、カード番号を入力する瞬間だけ。そこで「本物の画面か」を確かめれば、心配の多くは減らせます。
3行でわかる
- だます側の狙いは、通信をのぞくことより、偽のWi-Fiや偽のログイン画面でIDとパスワードを入力させること。
- 暗号化(HTTPS)が広がり、ふだんの閲覧のリスクは下がった。一方、偽のWi-Fiの問題を知らない利用者は60%(2025年度の総務省調査)。
- 今日やるのは、知らないWi-Fiへの自動接続をオフにすることと、入力の前にURLと鍵マークを見ること。
01 犯罪者側から見ると公衆Wi-Fiで、だます側は何を狙う?
だます側が狙うのは、IDとパスワードを本人に入力させることです。通信の中身が暗号化されるようになった今、偽のWi-Fiから偽のログイン画面へ誘う例を、総務省のマニュアルが挙げています。
昔の公衆Wi-Fiが危ないと言われたのは、多くのサイトが通信を暗号化していなかったからです。同じWi-Fiにいる人が、やりとりを盗み見られる状態でした。
今は事情が変わりました。HTTPS(通信を暗号化する仕組み。URLが「https://」で始まり、鍵マークが出る)なら、Wi-Fiが暗号化されていなくても、サイトまでの通信は守られます[1]。
そこで、だます側は本人に入力させる方向に動きます。総務省のマニュアルには、本物そっくりの名前の偽Wi-Fiが、SNSのログイン画面に似せた偽の入力画面へ誘導し、IDとパスワードをだまし取る例が載っています[1]。いつも使っている名前のWi-Fiでも、偽物が置かれていることがあります。
米連邦取引委員会(FTC)も、詐欺をする側が暗号化した偽サイトを作ると注意しています。その場合、通信は暗号化されていても、データは偽サイトを運営する側に渡ってしまいます[3]。メールやSMSで偽サイトに誘う手口と、行き着く先は同じです(フィッシングメール・SMSの見分け方)。
02 研究と統計でわかっていること公衆Wi-Fiは、今でも危ないの?
ふだんの閲覧なら、以前ほど危なくありません。米FTCは2023年、暗号化が広く使われているため公衆Wi-Fiは「たいてい安全」としました。残るリスクは、偽物の画面に自分で入力してしまうことです。
Felt ら(2017)[4]
2017年2月の時点で、日本のAndroid版ChromeでHTTPSで表示されたページは26%でした。同じ時期の米国は57%で、日本と韓国は調べた13か国の中で特に低い水準でした。
対象: ChromeとFirefoxの利用状況の集計(数十億回のページ表示)と、上位サイトの調査 / 限界: 2017年の数値で、今の割合を示すものではありません。
Sombatruang ら(2018)[5]
奈良市中心部の11か所に実験用の暗号化なしWi-Fiを置き、150時間の通信を調べました。196台の端末から約770万パケット(通信の小さな単位)が集まり、写真・メール・文書・ログイン情報が暗号化されずに送られていました。多くのアプリが送るデータを暗号化していなかったことも示されています。
対象: 奈良市の公衆Wi-Fi実験と、103人へのアンケート / 限界: 2018年発表の研究で、その後アプリの暗号化は進んでいます。
総務省「令和7年度 無線LAN利用者実態調査」(2026年2月実施)[2]
公衆Wi-Fiの利用者のうち、偽のWi-Fi(偽アクセスポイント)の問題を「知らなかった」人は60%でした。ネットワーク名を確かめる人は60%いましたが、暗号化を確かめる人は30%、HTTPSを確かめる人は29%でした。確かめない理由で一番多かったのは「確認方法がわからない」でした。
対象: ふだん無線LANを使う人へのWebアンケート(公衆Wi-Fi利用者532人) / 限界: 本人の申告で、実際の被害件数を調べたものではありません。
今のアプリについて、総務省は「大半のアプリはHTTPS通信を行っています」と説明しています[1]。FTCも、アプリが暗号化しているかは見分けにくいものの、大多数は暗号化していると述べています[3]。つまり、危なさは「Wi-Fiにつなぐこと」より「そこで何を入力するか」に移っています。
総務省の資料をもとに、場面ごとの気にする度合いを整理しました。
| 場面 | 何が守られているか | 気にすること |
|---|---|---|
| ニュース・動画・地図を見る | HTTPSならサイトまでの通信は暗号化される | ふだんどおりでよい |
| Wi-Fiにつないだ直後に出るログイン・登録画面 | 画面が偽物なら守られない | URL全体と鍵マーク、エラー表示を確かめる |
| ネットバンキング・カード番号の入力 | 偽サイトでも鍵マークは出ることがある | URLを確かめる。迷ったらモバイル回線に切り替える |
| 「暗号化なし」や提供者がわからないWi-Fi | 無線の区間は保護されない | 見られて困らない使い方だけにする |
03 お金をかけずに今日からできること外出先のWi-Fiで、何を確かめればいい?
知らないWi-Fiに自動でつながらない設定にし、IDやパスワードを入力する前だけURLと鍵マークを見てください。どれもスマホの設定と、数秒の確認で済みます。
自宅・職場以外のWi-Fiへの自動接続をオフにする
スマホの設定で、知らないネットワークに自動でつながらないようにします。過去に使ったお店のWi-Fiも、もう使わないなら登録を消します。総務省も、日常的に使う名前以外は自動接続を無効にするよう勧めています[1]。
所要 3分
つなぐ前に、お店の掲示とネットワーク名を見比べる
ステッカーなどで、誰が提供しているWi-Fiかを確かめます。提供者がわからないもの、少しでも不審なものにはつながないでおきます[1]。
所要 1分
入力の前に、URL全体・鍵マーク・エラー表示を見る
IDやパスワードを求める画面が出たら、URLが「https://」で始まり、いつもと同じかを確かめます。「安全ではありません」などのエラーが続くなら、入力せずにWi-Fiを切ります[1]。お金の手続きは、迷ったらモバイル回線で行います。
所要 30秒
大事なアカウントに二段階認証を設定しておく
万一パスワードを入力してしまっても、二段階認証があれば入られにくくなります。総務省も使い回しを避け、二要素認証を使うよう勧めています[1](設定の考え方は二段階認証とパスキーの研究)。
所要 10分
04 習慣にするコツ毎回の確認を、面倒にせず続けるには?
確認するのは「何かを入力するとき」だけ、と決めると続きます。総務省の調査でも、確かめない理由の上位は「確認方法がわからない」と「面倒くさい」でした。見る場所を1つ覚えれば十分です。
- 動画やニュースを見るだけのときは気にしない。気にするのは、パスワード・カード番号・個人情報を入れる画面だけにする。
- スマホではURLが一部しか出ないことがあるので、入力の前にアドレス欄を1回タップして全体を見る[1]。
- お金の手続きは「外ではモバイル回線」と決めておくと、毎回迷わずに済む。
- 家族のスマホも、自動接続の設定を一緒に見直す。
使い回しているパスワードがあると、1か所でだまし取られたときに被害が広がります(パスワードの使い回しは何が危ないのか)。自分の対策の進み具合はAI時代の防犯 セルフ点検で確かめられます。入力してしまったかもしれないときは、すぐにパスワードを変えてください。お金の被害が出た場合は、警察相談専用電話 #9110 に相談できます。
05よくある質問
無料Wi-Fiでネットバンキングや買い物をしても大丈夫?
できれば携帯電話の回線(モバイルデータ)に切り替えてから行うのが安心です。使う場合は、URL全体が正しいこと、鍵マークがあること、「安全ではありません」などのエラーが出ていないことを確かめてから入力してください。総務省は、暗号化なしの公衆Wi-Fiではログイン情報や個人情報の入力を避けるよう案内しています[1]。
鍵マーク(https)があれば、そのサイトは安全?
鍵マークは通信が暗号化されている印で、サイトが本物である保証ではありません。米FTCは、詐欺をする側が暗号化した偽サイトを作ることがあると注意しています[3]。総務省も、本物に似せた偽のURLがあるため、URL全体を確かめるよう案内しています[1]。
パスワード付きのWi-Fiなら安全?
お店などで全員に同じパスワードを配っているWi-Fiは、利用者全員がその鍵を知っている状態です。総務省は、この方式(WPA2パーソナル)の公衆Wi-Fiは、暗号化されていない場合と同じように注意して使うよう案内しています[1]。
災害時の「00000JAPAN」は使っていい?
使って大丈夫です。安否確認や情報を集めるための無料開放で、総務省は情報入手の利用にとどめ、必要最小限に使うよう呼びかけています。認証も暗号化もないため、パスワードやカード番号の入力は避けてください[1]。
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出典
- 総務省 (2025). 公衆Wi-Fi利用者向け 簡易マニュアル(令和7年2月版). https://www.soumu.go.jp/main_content/000989921.pdf
- 総務省 (2026). 令和7年度 無線LAN利用者実態調査 概要版. https://www.soumu.go.jp/main_content/001082205.pdf
- Federal Trade Commission (2023). Are Public Wi-Fi Networks Safe? What You Need To Know. https://consumer.ftc.gov/articles/are-public-wi-fi-networks-safe-what-you-need-know
- Felt, A. P., Barnes, R., King, A., Palmer, C., Bentzel, C., & Tabriz, P. (2017). Measuring HTTPS Adoption on the Web. 26th USENIX Security Symposium. https://www.usenix.org/conference/usenixsecurity17/technical-sessions/presentation/felt
- Sombatruang, N., Kadobayashi, Y., Sasse, M. A., Baddeley, M., & Miyamoto, D. (2018). The continued risks of unsecured public Wi-Fi and why users keep using it: Evidence from Japan. 2018 16th Annual Conference on Privacy, Security and Trust (PST). https://doi.org/10.1109/PST.2018.8514208


