「見られている」だけで盗みは減るのか。目の絵の看板で自転車盗難が62%減った研究

駐輪場の上に、じっとこちらを見つめる目の絵と「自転車泥棒、見ているぞ」という言葉の看板を掲げる。たったそれだけで、英国の大学では自転車の盗難が62%減りました。人は、本物の監視でなくても「見られている」と感じるだけで、行動を変えるのです。
3行でわかる
- 大学の駐輪場3か所に目の絵の看板を掲げた研究で、自転車の盗難は12か月で62%減った。一方、看板のない場所では65%増えた。
- 大学のコーヒー代の正直箱に目の絵を貼ると、人々は花の絵のときの約3倍のお金を払った。
- 人は「見られている」と感じると評判を気にして行動を変える。防犯では、本物の人の目を感じさせる環境づくりが基本になる。
01犯罪者側から見ると何が起きているか
盗みを考える人は、「誰にも見られていない」と感じる場所を選びます。逆に、見られていると感じる場所は避けようとします。
人には、周りから見られていると感じると、評判を気にして望ましい行動をとろうとする傾向があります。目の絵のような簡単な手がかりでも、この反応が起きることがわかっています。
犯罪をする側にとっても同じです。誰かに見られているかもしれない、という感覚は、行動を思いとどまらせる力を持っています。
02研究と統計でわかっていること
目の絵の看板は、自転車の盗難を大きく減らしました。ただし、盗みが看板のない場所に移る傾向も見られました。
Nettleら(2012)[1]
英国の大学で、自転車の盗難が多い3か所の駐輪場の上に、目の絵と言葉の看板を掲げた。看板を掲げる前後12か月を比べると、看板のある場所では盗難が62%減り、看板のない大学内の他の場所では65%増えた。研究者は、看板は効果があったが、盗みを看板のない場所に移した可能性があるとしている。
対象: 1つの大学の駐輪場の盗難届 / 限界: 1つの大学での研究で、盗難の移動も起きていた。
Batesonら(2006)[2]
大学のコーヒー室で、飲み物代を自分で入れる正直箱の上に目の絵を貼った週は、花の絵を貼った週に比べて、人々は約3倍のお金を払った。実生活の場面で「見られている手がかり」が行動に影響することを初めて示した研究とされる。
対象: 大学のコーヒー室の利用者 / 限界: 1つの職場での研究。
Ganglら(2024、査読前)[3]
ウィーンの集合住宅のごみ置き場440か所でポスターを比べた。目の絵のポスターは、ごみのポイ捨てを減らした。一方、「ポイ捨てしない」という決まりを示すポスターは、かえってポイ捨てを増やした。
対象: ウィーンの集合住宅のごみ置き場 / 限界: 専門家の査読を受けていない論文で、ポイ捨ての研究。
03お金をかけずに今日からできること
本物の「人の目」を感じさせる環境を、家のまわりにつくります。どれもお金はほとんどかかりません。
見通しをよくする
家の前や駐輪場の植木を刈り込み、道や近所の窓から見えやすくします。人の目が届く場所は、盗みを考える人に避けられやすくなります。
所要 30分
あいさつで「顔見知りの目」を増やす
近所の人とあいさつを交わすと、見慣れない人に気づいてもらいやすくなります。
所要 毎日数秒
自転車は人目のある場所に止める
人通りのある、管理された駐輪場に止め、鍵を必ずかけます。
所要 数分
04習慣にするコツ
看板に頼り切らず、本物の人の目と組み合わせることです。研究では、看板のない場所に盗みが移ることもありました。
- 目の絵や看板は、効果が出ても「それだけで安心」とは考えない。
- 近所の人と、見慣れない車や人に気づいたら声をかけ合う関係をつくる。
- 不審な人を見かけて不安を感じたら、警察相談専用電話(#9110)に相談する。
05よくある質問
目の絵の看板に防犯効果はありますか
英国の大学の研究では、目の絵の看板を掲げた駐輪場で自転車の盗難が62%減りました。ただし看板のない場所では盗難が増えていました。
なぜ目の絵で行動が変わるのですか
人は見られていると感じると、評判を気にして望ましい行動をとろうとする傾向があるためと考えられています。
看板だけで防犯になりますか
看板だけに頼るのはおすすめしません。盗みが他の場所に移ることもあるため、見通しのよさや近所の人の目と組み合わせることが大切です。
出典
- Nettle, D., Nott, K., & Bateson, M. (2012). 'Cycle thieves, we are watching you': impact of a simple signage intervention against bicycle theft. PLOS ONE, 7, e51738. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0051738
- Bateson, M., Nettle, D., & Roberts, G. (2006). Cues of being watched enhance cooperation in a real-world setting. Biology Letters, 2, 412-414. https://doi.org/10.1098/rsbl.2006.0509
- Gangl, K., Walter, A., & Van Lange, P. A. M. (2024). Posters of Watching Eyes and Nature Promote and posters of Injunctive Norms Undermine Clean Environments. Research Square(査読前論文). https://doi.org/10.21203/rs.3.pex-1841/v1