AI時代のセキュリティチェック。専門家が自分のために優先する3つ

個人のセキュリティ対策は、①スマホとパソコンの更新を自動にする、②パスワードを使い回さない、③二段階認証をオンにする、の3つから点検するのが近道です。セキュリティの専門家が自分のために挙げた対策は、この順に多く、一般の人の答えとは大きく違っていました。
3行でわかる
- 攻撃する側が狙うのは、更新していない機器の弱点と、使い回されたパスワード。
- 専門家231人が自分のために挙げた対策は「更新」35%が最多。一般の人はウイルス対策ソフト(42%)が最多だった。
- 今日やるのは、自動更新・使い回しの解消・二段階認証の3つ。合わせて30分ほどで点検できる。
01 犯罪者側から見ると攻撃する側は、個人の何を狙う?
攻撃する側が狙うのは、弱点が直されていない機器と、よそで漏れたパスワードがそのまま使えるアカウントです。どちらも、本人が気づかないうちに入り口になります。
ソフトウェアには、あとから欠陥(脆弱性)が見つかることがあります。メーカーは直すための更新を配りますが、更新していない機器には穴が残ったままです。総務省は、更新が出たら速やかに適用し、サポートの切れたソフトウェアは使わないよう呼びかけています[5]。
パスワードも同じです。どこかのサービスから漏れたIDとパスワードは、別のサービスでも試されます。使い回していると、1か所の流出で複数のアカウントが開いてしまいます(仕組みはパスワードの使い回しは何が危ないのかで解説しています)。
情報処理推進機構(IPA)が2026年1月に公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」の個人編にも、インターネット上のサービスへの不正ログインや、フィッシングによる個人情報の詐取が入っています[4]。
02 研究と統計でわかっていること専門家と一般の人で、対策はどう違う?
専門家が最も多く挙げたのは「ソフトウェアの更新」で、一般の人が最も多く挙げたのは「ウイルス対策ソフト」でした。この差は4年後の追試でもほとんど縮まっていませんでした。
Ion、Reeder、Consolvo(2015)[1]
専門家が自分のために挙げた対策は、更新(35%)、パスワードを使い回さない(25%)、二段階認証(20%)の順でした。一般の人は、ウイルス対策ソフト(42%)、強いパスワード(31%)、パスワードをこまめに変える(21%)の順でした。
対象: 5年以上の実務経験があるセキュリティ専門家231人と、オンライン調査で集めた一般の人294人への自由回答アンケート / 限界: 本人の申告であり、実際の被害の減り方を測った研究ではありません。
Busse、Schäfer、Smith(2019)[2]
同じ調査を4年後にやり直すと、専門家の助言の上位はほぼ同じで、大きく変わったのは1点だけでした。一般の人の答えはほとんど変わらず、専門家との差はそのまま残っていました。
対象: 主に欧州のセキュリティ専門家75人と、オンライン調査で集めた一般の人288人 / 限界: 専門家の集め方が元の研究(主に米国)と違います。こちらも本人の申告です。
| 見直したい思い込み | 専門家が優先していること |
|---|---|
| ウイルス対策ソフトを入れたから大丈夫 | OSとアプリを最新にする(自動更新) |
| パスワードをこまめに変える | サービスごとに別のパスワードにする |
| 知っているサイトしか見ない | 二段階認証で、盗まれても入られないようにする |
03 お金をかけずに今日からできることセキュリティチェックは何から始める?
更新・パスワード・二段階認証の順に、3つを点検してください。どれも無料で、スマホの設定画面だけで終わります。
スマホとパソコンの自動更新をオンにする
設定の「ソフトウェア・アップデート」で自動更新を有効にします。アプリの自動更新も同じようにオンにします。総務省も、更新が出たら速やかに適用するよう呼びかけています[5]。
所要 5分
大事な3つのアカウントだけ、使い回しをやめる
メール・お金(銀行やカード)・よく使うSNSの3つから始めます。メールは他のサービスのパスワード再設定に使われるので、最優先です。覚えきれない場合は、端末に付いているパスワード管理機能に任せます。
所要 15分
04 習慣にするコツAI時代、点検はどのくらいの頻度で必要?
更新は自動に任せ、自分で見直す日は年に数回決めておくと続きます。英国の国家サイバーセキュリティセンターは、更新が出てから、更新していないソフトが狙われるまでの時間が短くなっていると指摘しています。
NCSCは2024年1月の評価で、AIが今後2年でサイバー攻撃の数と影響を「ほぼ確実に」増やすとしました[3]。だます文面づくりや下調べにAIが使われるためです。人の注意力だけに頼らず、自動で守られる設定を先に作っておくことが大切になります。
- 「更新があります」の通知は、その日の夜に済ませる。後回しにするほど穴が開いている期間が長くなる。
- 新しいサービスに登録するときは、その場で別のパスワードと二段階認証をセットにする。
- 季節の変わり目など、年に数回の日を決めて、使っていないアカウントを消す。
- 家族の古いスマホも一緒に点検する。自分だけ守っても、家族のアカウントから詐欺の連絡が届くことがある。
自分の状態はAI時代の防犯 セルフ点検でも確かめられます。乗っ取られたかもしれないときは、乗っ取られたときの取り戻す手順を先に読んでください。お金の被害が出た場合は、警察相談専用電話 #9110 に相談できます。
05よくある質問
個人のセキュリティ対策は、何から始めればいい?
スマホやパソコンの更新を自動にすることからです。セキュリティの専門家231人に聞いた研究で、自分のために最も多く挙げられたのがソフトウェアの更新(35%)でした[1]。次に、パスワードを使い回さないこと、二段階認証が続きます。
ウイルス対策ソフトを入れていれば安心?
それだけでは足りません。一般の人の42%がウイルス対策ソフトを挙げた一方、専門家で挙げた人は7%でした[1]。更新されていない機器の弱点や、盗まれたパスワードでのログインは、ウイルス対策ソフトだけでは防ぎきれないためです。
パスワードは定期的に変えたほうがいい?
漏れた疑いがないなら、定期的に変えることより、サービスごとに別のパスワードにすることを優先してください。研究では、一般の人の21%が「パスワードをこまめに変える」を挙げましたが、専門家では2%でした[1]。
AIで攻撃はどう変わった?
英国の国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)は2024年、AIが今後2年でサイバー攻撃の数と影響をほぼ確実に増やすと評価しました[3]。だましの文面や下調べが巧妙になるほか、更新が出てから、更新していないソフトが狙われるまでの時間も短くなっていると指摘しています。
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出典
- Ion, I., Reeder, R., & Consolvo, S. (2015). "...no one can hack my mind": Comparing Expert and Non-Expert Security Practices. Proceedings of the Eleventh Symposium On Usable Privacy and Security (SOUPS 2015). https://www.usenix.org/conference/soups2015/proceedings/presentation/ion
- Busse, K., Schäfer, J., & Smith, M. (2019). Replication: No One Can Hack My Mind. Revisiting a Study on Expert and Non-Expert Security Practices and Advice. Proceedings of the Fifteenth Symposium on Usable Privacy and Security (SOUPS 2019). https://www.usenix.org/conference/soups2019/presentation/busse
- National Cyber Security Centre (2024). The near-term impact of AI on the cyber threat. https://www.ncsc.gov.uk/report/impact-of-ai-on-cyber-threat
- 情報処理推進機構(IPA)(2026). 情報セキュリティ10大脅威 2026. https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html
- 総務省. 国民のためのサイバーセキュリティサイト「サポート切れソフトウェアを利用しないようにしよう」. https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/cybersecurity/kokumin/security/end_user/general/03/


