空き巣・侵入窃盗

「災害のあとは治安が悪くなる」は本当か。研究でわかった実際の被害と、避難前の3つの備え

約4分で読めます

Galveston, Texas, September 30, 2008 - This house on the beach facing the ocean on the gulf coast side of Galveston Island survived Hurrican
Photo: Robert Kaufmann/FEMA / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的統計をAIが調べて整理しました(防犯グッズ・商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

大きな地震や水害のたびに、「避難している間に家に誰か入るのでは」「災害のあとは治安が悪くなると聞いた」と不安になる人は少なくありません。研究を調べると、そうした噂の多くは、実際の被害よりも大きく広がっていました。それでも、空き家になった住宅が狙われる例は報告されています。避難する前にできる、お金のかからない備えをまとめました。

3行でわかる

  1. 「災害のあとに略奪が起きた」という噂を聞いた人は7〜9割にのぼったが、実際に被害を報告した人はごく一部だったとする研究のまとめがある。
  2. 日本でも、東日本大震災後の調査で「災害のあとは犯罪が増える」という思い込みが広がっていたことが確認されている。
  3. それでも、家が壊れて長く住めない、避難が長引くなど特定の条件が重なると、侵入のリスクは上がるとされる。避難前の数分の備えが有効。

01犯罪者側から見ると何が起きているか

犯罪をする側は、災害そのものに興味があるわけではない。空き家になった家や、ふだんなら人がいる場所に誰もいない状況など、「見つかりにくく、咎められにくい」条件がそろったときだけ、一部の人が機会をとらえる。

大きな災害が起きると、「無法状態になって誰もが略奪に走る」というイメージが広がりやすくなります。しかし、世界の研究をまとめたレビューでは、そうした全面的な無法状態は実際にはまれだと報告されています。

報告されている被害の多くは、特定の条件が重なったときに起きています。家が壊れて住めなくなった、長期間の避難で誰もいない、援助がなかなか届かず生活に必要な物が足りない。こうした状況が、ふだんなら思いとどまる一部の人を後押ししてしまう、と考えられています。

つまり、災害そのものが人を変えるわけではなく、「空き家である」という条件が機会的な行動を誘ってしまう構図です。これは、平常時の空き巣が「留守にしている家」を狙う考え方と同じです。

02研究と統計でわかっていること

複数の国の研究をまとめたレビューでは、災害のあとに略奪が「あった」という噂は広く伝わるが、実際に被害を報告した人は噂を聞いた人よりかなり少なかった。日本の調査でも同様の思い込みが見つかっている。

7〜9割「災害のあとに略奪が起きた」という噂を聞いたことがある人の割合
8件世界で査読の質の基準を満たし、レビューの分析対象になった研究数(2,467件から絞り込み)
300人東日本大震災後、思い込みの広がりを調べた日本の調査の対象者数(2014年発表)

Sheikhiら(2025)[1]

災害後の略奪について世界の研究をまとめたレビュー。「略奪が起きた」という噂を聞いた人は7〜9割にのぼったが、実際に被害を報告した人はごく一部だった。被害が目立った事例では、住宅の損壊や長引く避難、援助の遅れなど、特定の条件が重なっていた。

対象: 米国6件・日本1件・インドネシア1件、計8件の研究(2,467件の文献から絞り込み) / 限界: 研究の方法が異なるため、数値を統合した分析(メタ分析)はできなかった。

Nogami & Yoshida(2014)[2]

東日本大震災後、日本人300人に、災害にまつわる5つの思い込み(パニック、略奪、犯罪の増加など)をどれくらい信じているか尋ねた。思い込みは日本でも広がっており、テレビやネットニュースをよく見る人ほど「犯罪が増えた」という思い込みを強く持っていた。家族や友人からの情報は、思い込みの強さとは関係しなかった。

対象: 日本国内の300人(オンライン調査) / 限界: 実際の犯罪統計との比較ではなく、思い込みの強さを調べた調査。

van Brown(2019)[3]

災害後の略奪に関する既存研究を見直した論文。支援が遅れたり、もともと格差の大きい地域で起きたハリケーン・カトリーナなどでは、実際に略奪が広がった例も報告されていると指摘する。一方、支援が速かったハリケーン・サンディでは、目立った略奪は起きなかった。

対象: 既存の災害研究の再検討(議論を提起する論文) / 限界: 著者自身の新しい調査ではなく、既存研究の解釈が中心。

03お金をかけずに今日からできること

避難するときほど、短い時間でできる備えが役に立つ。鍵をかける、貴重品を見える場所に置かない、SNSに留守を広げない。この3つが基本になる。

1

出る前に鍵を一周確認する

玄関だけでなく、窓・ベランダ・物置・車の鍵も確認してから避難します。貴重品は外から見える場所に置かないようにします。

所要 3分

2

SNSに「今、家にいません」を広げない

避難の様子や被害を発信するときも、位置情報や「自宅が空である」とわかる情報は避けます。落ち着いてから、身元が広がらない形で投稿します。

所要 1分

3

近所や家族に一声かけておく

可能なら、近くに残る人や家族に「しばらく留守にする」と伝えます。声をかけ合う関係が、災害後の助け合いにもつながるとされています。

所要 2分

04習慣にするコツ

備えは、災害が起きてから思い出すのではなく、日ごろの持ち出しリストに組み込んでおくと、焦っているときでも動きやすくなる。

05よくある質問

災害のあとは本当に空き巣が増えるのですか

研究では、「略奪が増えた」という噂は実際の被害より大きく広がりやすいことが分かっています。ただし、住宅が壊れて長く留守になる場合などは、侵入のリスクが上がるとされており、油断はできません。

避難先から戻ったら、家が荒らされていました。どうすればいいですか

まず自分の安全を確かめ、不用意に室内に入らず、110番に連絡してください。保険に入っている場合は保険会社にも連絡しましょう。

災害の後に「点検します」と訪ねてくる人は信用していいですか

身分証の提示を求め、その場で契約や支払いをしないことが基本です。不安なときは警察相談専用電話(#9110)に相談できます。

出典

  1. Sheikhi, R. A., Javanbakhtian, R., & Heidari, M. (2025). Looting and antisocial behavior after disasters: a systematic review. BMC Public Health, 25, 309. https://doi.org/10.1186/s12889-025-21285-7
  2. Nogami, T., & Yoshida, F. (2014). Disaster myths after the Great East Japan Disaster and the effects of information sources on belief in such myths. Disasters, 38(S2), S190–S205. https://doi.org/10.1111/disa.12073
  3. van Brown, B. L. (2019). Conflict or consensus? Re-examining crime and disaster. Jàmbá: Journal of Disaster Risk Studies, 11(1), 744. https://doi.org/10.4102/jamba.v11i1.744