なぜ高齢者は詐欺の被害にあいやすいのか。研究でわかった7つの要因と家族ができること

特殊詐欺の被害は、いまも高齢者に集中しています。2025年、65歳以上の被害は1万4,273件で、全体の51.3%。被害額は841.1億円で、59.2%を占めました。だまされるのは、本人の不注意だけが原因ではありません。研究は、年齢とともに変わる心と暮らしの要因を指摘しています。
3行でわかる
- 2025年の特殊詐欺の被害のうち、65歳以上は1万4,273件(51.3%)、被害額は841.1億円(59.2%)だった。
- 米国のメタ分析では、地域で暮らす高齢者の5.4%が1年の間に詐欺の被害にあっていた。約18人に1人にあたる。
- 研究のまとめでは、認知機能の低下、感情や動機の変化、人を信じやすい傾向、社会的な孤立、詐欺対策の知識不足などが要因として挙げられている。
01犯罪者側から見ると何が起きているか
詐欺をする側は、孤立している、急な知らせに動揺しやすい、といった状況につけこみます。だまされやすさは性格ではなく、状況でも生まれます。
高齢者が詐欺の被害にあいやすい理由を整理した研究では、認知機能の低下、感情の調整や動機の変化、人を信じやすい傾向、心理的な弱さ、社会的な孤立、リスクをとる傾向、詐欺対策の知識の不足が挙げられています。
特に、相談できる人がそばにいない状況では、詐欺の電話や連絡を一人で判断することになり、被害につながりやすくなります。
02研究と統計でわかっていること
詐欺の被害は高齢者に多く、海外の研究でも毎年一定の割合の高齢者が被害にあっています。
警察庁(2025年の確定値)[1]
特殊詐欺は2万7,832件、被害額1,423.1億円。65歳以上の被害は1万4,273件(法人を除く件数の51.3%)、被害額は841.1億円(59.2%)。警察官を名乗る詐欺は1万1,014件・1,005.0億円だった。若い世代の被害も急増しており、65歳以上の割合は前年より14.0ポイント下がった。
対象: 全国の警察が認知した被害 / 限界: 届け出られていない被害は含まれない。
Burnesら(2017)[2]
米国の12の研究(4万1,711人)をまとめたメタ分析。地域で暮らす認知機能に問題のない高齢者のうち、1年間に詐欺の被害にあった人は5.4%で、約18人に1人にあたる。具体的な詐欺の例を挙げて質問すると割合は7.1%に上がり、研究者は実際の被害はもっと多い可能性があるとしている。
対象: 米国の高齢者 / 限界: 日本の高齢者とは状況が異なる。
Shaoら(2019)[3]
高齢者が詐欺の被害にあいやすい理由についての研究を整理したレビュー。認知機能の低下、感情の調整と動機の変化、人を信じやすい傾向、心理的な弱さ、社会的な孤立、リスクをとる傾向、詐欺対策の知識の不足を要因として挙げている。
対象: これまでの研究の整理 / 限界: 数値をまとめたメタ分析ではない。
03お金をかけずに今日からできること
孤立させないことと、判断を一人でさせない仕組みが、家族にできる一番の備えです。
週に1回、連絡する
電話やメッセージで、ふだんから話す機会をつくります。変わったことがあれば話してもらいやすくなります。
所要 10分
「お金の話は必ず相談」を約束する
電話やメールでお金の話が出たら、払う前に家族に連絡する約束をします。
所要 5分
最新の手口を話題にする
警察官を名乗る詐欺など、新しい手口をニュースから一緒に確かめます。
所要 10分
04習慣にするコツ
だまされたことを責めないと先に伝えておくことです。責められると思うと、被害を隠してしまいます。
- 留守番電話の設定にして、知らない番号には出ない習慣を一緒につくる。
- 「警察」「銀行」を名乗る電話でも、一度切って公式の番号にかけ直す。
- 不安なときは警察相談専用電話(#9110)に相談する。
05よくある質問
なぜ高齢者は詐欺にあいやすいのですか
研究では、認知機能の低下、人を信じやすい傾向、社会的な孤立、詐欺対策の知識不足などが要因として挙げられています。
高齢者の詐欺被害はどれくらいありますか
警察庁によると、2025年の特殊詐欺の被害の51.3%が65歳以上で、被害額は841.1億円でした。
家族は何ができますか
ふだんから連絡を取り、お金の話が出たら必ず相談する約束をすること、だまされても責めないと伝えておくことが大切です。
出典
- 警察庁. 「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(2026年5月22日). https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2025.pdf
- Burnes, D., Henderson, C. R., Sheppard, C., Zhao, R., Pillemer, K., & Lachs, M. S. (2017). Prevalence of Financial Fraud and Scams Among Older Adults in the United States: A Systematic Review and Meta-Analysis. American Journal of Public Health, 107(8), e13-e21. https://doi.org/10.2105/AJPH.2017.303821
- Shao, J., Zhang, Q., Ren, Y., Li, X., & Lin, T. (2019). Why are older adults victims of fraud? Current knowledge and prospects regarding older adults' vulnerability to fraud. Journal of Elder Abuse & Neglect, 31(3), 225-243. https://doi.org/10.1080/08946566.2019.1625842