一人暮らしは何階が安全? 1階は本当に危ないのか。階数別の侵入統計

部屋探しで「1階はやめたほうがいい」と言われて、迷っている人は多いはずです。空き巣に限れば、その心配には根拠があります。福岡市の集合住宅の侵入窃盗8,845件を分析した研究では、被害の約半数が1階で、3階以下の部屋の被害率は4階以上の4倍以上でした。ただし、2階以上でも玄関からの被害は残ります。階ごとに、気をつける場所が変わるだけです。
3行でわかる
- 福岡市の集合住宅の侵入窃盗(2005〜2014年)では、被害の49%が1階で、3階以下の部屋の被害率は4階以上の4倍以上だった。
- 1階はベランダ側の窓からのガラス破りが中心。2階以上は玄関からの侵入が最も多く、鍵のかけ忘れも4割前後あった。
- 性被害を階数別に集計した公的な統計は見つからなかった。東京では2025年、不同意性交等の27.5%が中高層住宅で起きている。
01 犯罪者側から見ると空き巣はなぜ1階の部屋を選ぶのか
空き巣が1階を選びやすいのは、道路や敷地から窓まで近づきやすく、人目につきにくいからです。2階以上では窓に近づきにくくなる分、玄関が狙われます。
侵入する側は、見つかりにくく、手間の少ない入口を探します。1階のベランダは、敷地の外から歩いて近づけます。塀や植え込みで道路から見えない場合は、なおさらです。
オランダの住宅851軒を調べた研究でも、敷地や家への近づきにくさ(出入りの制限)が、昼と夜の両方の空き巣に関係していました[5]。
一方、2階以上のベランダには、ふつうは地面から届きません。そのため侵入する側は、共用廊下に面した玄関や、共用階段・縦樋(雨水を流す管)など、足場になる所を探します。国土交通省の共同住宅の設計指針も、地面に接する階以外ののバルコニーは共用廊下・共用階段・縦樋から離すか、侵入を防ぐ工夫をするよう求めています[4]。
02 研究と統計でわかっていること1階と2階以上で、空き巣の入り方はどう違う?
福岡市の集合住宅の分析では、1階の被害の57%がベランダ側の窓から、52%がガラス破りでした。2階以上は玄関からの侵入が最も多く、鍵のかけ忘れが4割前後を占めていました。
樋野公宏(東京大学)、福岡県警察の提供データによる研究報告 [1]
福岡市の集合住宅で起きた侵入窃盗8,845件のうち、被害の49%が1階、13%が2階、6%が3階でした。市内の戸数で割った被害率(1,000戸あたり、10年間の合計)は、3階以下の部屋で39.2件、4階以上の部屋で9.2件でした。被害者の65%は一人暮らしの世帯で、20代が45%でした。
対象: 2005年1月〜2014年12月に福岡市の集合住宅で起きた侵入窃盗(86%が空き巣) / 限界: 1つの市の、10年以上前を含むデータです。階が不明の事件が20%あり、階ごとの戸数は国勢調査からの推計です。
| 部屋の階 | 多かった侵入口 | ガラス破り | 鍵のかけ忘れ |
|---|---|---|---|
| 1階 | ベランダ側の窓 57% | 52% | 33% |
| 2階 | 玄関 46%(ベランダ側の窓 29%) | 18% | 43% |
| 3階 | 玄関 52%(ベランダ側の窓 24%) | 12% | 39% |
| 4階以上 | 玄関 57%(ベランダ側の窓 16%) | 7% | 38% |
同じ報告では、高い階でも安心できない例も挙がっています。エレベーターのない5階建ての最上階の角部屋が、共用階段から入れるベランダの窓を使われ、3か月で8回被害に遭っていました[1]。
警察庁「住まいる防犯110番」(令和7年=2025年のデータ) [2]
全国の共同住宅の侵入窃盗では、3階建以下の建物(2,675件)は鍵のかけ忘れ47.4%、ガラス破り18.5%で、侵入口は玄関50.7%、窓34.7%でした。4階建以上の建物(1,588件)は鍵のかけ忘れ39.5%、合かぎ24.6%、ガラス破り11.0%で、侵入口は玄関65.4%、窓21.9%でした。
対象: 全国の警察が把握した侵入窃盗 / 限界: 建物の高さで分けた集計で、部屋の階ごとの数字ではありません。件数で、戸数あたりの率ではありません。
警視庁「令和7年版 東京の犯罪」(2025年のデータ) [3]
東京の不同意性交等632件の発生場所は、中高層住宅27.5%、その他の住宅(3階建以下の共同住宅など)11.6%、一戸建て住宅3.6%でした。不同意わいせつ909件では、中高層住宅15.1%、その他の住宅7.3%でした。警視庁は、オートロックのマンションや高層階の部屋でも、玄関ドアや窓を必ず施錠するよう呼びかけています。
対象: 東京で警察が認知した事件 / 限界: 件数の内訳で、住んでいる人の数で割った率ではありません。東京は中高層住宅に住む人が多いため、「高い建物ほど危ない」とは読めません。
性被害については、部屋の階ごとに集計した公的な統計を、今回の調査では見つけられませんでした。空き巣の「1階ほど多い」という傾向が、性被害にも当てはまるかはわかっていません。
03 お金をかけずに今日からできること1階でも高い階でも、今日からできることは?
住んでいる階に合わせて、狙われやすい場所を先に固めることです。1階はベランダ側の窓、2階以上は玄関の鍵、どの階でも玄関を開けるまでの数秒に気を配ります。
1〜3階なら、ベランダ側の窓を毎回施錠する
外出時と就寝時は、閉めるだけでなく鍵までかけます。補助錠が付いていれば、それも使います。設計指針も、地面に接する階などの窓には補助錠や面格子などの措置を求めています[4]。
所要 10秒
ベランダの外に足場と死角がないか見る
ベランダから外を見て、道路から見えない場所か、近くに共用階段・縦樋・物置・塀など登れる物がないかを確かめます。気になる点は管理会社や大家さんに伝えます。
所要 3分
2階以上なら、玄関の鍵を「数分でも」かける
2階以上の被害では玄関からの侵入が最も多く、鍵のかけ忘れが4割前後ありました[1]。ゴミ出しや郵便受けへ行く間も施錠します。
所要 5秒
部屋探しでは、階と一緒に「近づきやすさ」を見る
内見では、ベランダが道路から見えるか、共用階段や廊下からベランダに移れないか、建物の入口が明るく見通せるかを確かめます。
所要 内見時に10分
04 習慣にするコツ階のことを気にしすぎずに続けるには?
「自分の階で多い入り方」を1つだけ覚え、その場所の確認を毎日の動作に組み込むことです。1階なら窓、2階以上なら玄関と決めておくと迷いません。
- 寝る前に、ベランダの窓を指さして鍵を確かめる。
- 玄関で靴を脱いだら、振り返って鍵とドアガードをかける。
- 引っ越したら最初の週に、ベランダの外の足場を一度だけ見ておく。新居の点検は「引っ越し直後は狙われやすい?」にまとめています。
- 窓の守り方は「窓から入られないために」、建物の入口については「オートロックのマンションは本当に安全か」で詳しく紹介しています。
1階に住んでいても、被害に遭うのはあなたの落ち度ではありません。階は変えられなくても、近づきにくく、入りにくくすることはできます。後をつけられている、誰かが部屋をうかがっている気がするなど、身の危険を感じたときは110番、急がない相談は警察相談専用電話 #9110 です。
05よくある質問
一人暮らしの1階は本当に危ないですか?
空き巣に限れば、低い階ほど被害に遭いやすいというデータがあります。福岡市の集合住宅の侵入窃盗8,845件(2005〜2014年)の分析では、被害の約半数が1階で、3階以下の部屋の被害率は4階以上の4倍以上でした。1階の侵入口はベランダ側の窓が57%でした。
一人暮らしの女性は何階に住めば安全ですか?
「何階なら安全」と言える公的な統計は見つかりませんでした。東京の2025年の統計では、不同意性交等632件のうち27.5%が中高層住宅で起きています。階数よりも、玄関を開ける前に周りを見る、在宅中も施錠するといった習慣が大切です。
2階なら窓を開けていても大丈夫ですか?
安全とは言えません。福岡市の研究では、2階の被害でも侵入口の29%がベランダ側の窓でした。外出時と就寝時は、2階以上でも窓に鍵をかけます。
最上階なら空き巣に入られませんか?
入られることがあります。福岡市の研究では、エレベーターのない5階建ての最上階の角部屋が、共用階段から入れるベランダの窓を使われ、3か月で8回被害に遭った例が報告されています。
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出典
- 樋野公宏「集合住宅における侵入窃盗の時空間的近接」(研究報告。データは犯罪予防研究アドバイザー制度のもとで福岡県警察が提供). https://www.police.pref.fukuoka.jp/data/open/cnt/3/1005/1/01hino.pdf
- 警察庁「住まいる防犯110番 手口で見る侵入犯罪の脅威」(令和7年のデータ). https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki26/theme_a/a_d_1.html
- 警視庁「令和7年版 東京の犯罪」. https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/jokyo_tokei/jokyo/hanzai.files/tokyo.pdf
- 国土交通省「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」(警察庁「住まいる防犯110番」掲載). https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki26/theme_c/pdf/h1804_02.pdf
- Montoya, L., Junger, M., & Ongena, Y. (2016). The Relation Between Residential Property and Its Surroundings and Day- and Night-Time Residential Burglary. Environment and Behavior, 48(4), 515-549. https://doi.org/10.1177/0013916514551047


