AIが書くと詐欺メールは見抜けなくなるのか。「日本語が変」に頼らない見分け方

「日本語がおかしいメールは詐欺」。この見分け方は、もう頼りになりません。生成AIを使えば、自然な文面の詐欺メールを誰でも短時間で作れるからです。2025年に国内で報告されたフィッシングは245万4,297件。文面ではなく、行動で身を守る方法が必要になっています。
3行でわかる
- 112人を対象にした研究で、AI(GPT-4)が自動で書いたフィッシングメールのクリック率は30〜44%で、ありがちな詐欺メールの19〜28%より高かった。
- 2025年のフィッシング報告件数は245万4,297件で、ネットバンキングの不正送金4,747件・約104億円の手口の約9割がフィッシングだった。
- 生成AIを悪用してフィッシングサイトを改修していた男らが、2025年に逮捕されている。
01犯罪者側から見ると何が起きているか
詐欺をする側にとって、AIは文面を作る手間とコストを大きく減らす道具です。不自然な日本語という「目印」も消えていきます。
研究者は、大規模言語モデルによってフィッシングやなりすましメールのコストが下がり、詐欺をする側の動機が高まると指摘しています。
警察庁は、AIの悪用で専門知識のない人でもサイバー攻撃に使える情報に近づきやすくなると見ています。実際に、生成AIを使って大手通販サイトを装う偽サイトを改修していた男らが、2025年6月に逮捕されました。
02研究と統計でわかっていること
AIが書いた詐欺メールは、ありがちな詐欺メールよりクリックされやすいことがわかっています。国内のフィッシング報告も増え続けています。
Heidingら(2024)[1]
112人に実験用のメールを送った。ありがちな詐欺メールのクリック率は19〜28%、GPT-4が自動で書いたメールは30〜44%、人がだましの原則に沿って作ったメールは69〜79%だった。AIは人が丁寧に作ったメールほどではないが、ありがちな詐欺メールを上回った。一方、AIは怪しいメールを見抜く力も高かった。
対象: 112人の参加者 / 限界: 人数が少なく、英語のメールでの実験。
警察庁(2025年)[2]
フィッシング報告件数は245万4,297件で、右肩上がりの増加が続いている。ネットバンキングの不正送金は4,747件、被害総額は約103億9,700万円で、手口の約9割がフィッシングだった。生成AIを悪用して偽サイトを改修していた男らが逮捕された事例も紹介されている。
対象: 国内の報告・認知件数 / 限界: AIが書いたメールの件数は集計されていない。
フィッシング対策協議会(2025年12月)[3]
2025年12月のフィッシング報告件数は19万500件。かたられたブランドは114で、Amazonをかたるものが約12.6%、Appleが約6.1%だった。フィッシングサイトのURLは5万5,485件だった。
対象: 協議会に寄せられた報告 / 限界: 1か月分の集計。
03お金をかけずに今日からできること
メールの文面を読んで判断するのをやめ、リンクを押さない仕組みで守ります。
メールのリンクからログインしない
「お支払いの確認」「アカウント停止」などのメールが来ても、リンクは押さず、ブックマークや公式アプリから自分でサイトを開きます。
所要 習慣
公式アプリの通知で確かめる
銀行や通販サイトのお知らせは、公式アプリやサイトにログインして確かめます。本当の連絡なら、そこにも表示されます。
所要 2分
家族と「急かすメールは疑う」を共有する
「今日中に」「至急」と急がせるメールは詐欺の典型だと家族で話しておきます。
所要 5分
04習慣にするコツ
「怪しいかどうか」を毎回判断しない仕組みにすることです。どのメールでもリンクは押さないと決めれば、AIの文面にもだまされにくくなります。
- よく使うサイトはブックマークに登録しておく。
- パスワードを入力してしまったら、すぐに正規のサイトで変更する。
- 金銭の被害が出たら、金融機関と警察に連絡する。
05よくある質問
AIが書いた詐欺メールは見抜けますか
文面だけで見抜くのは難しくなっています。研究では、AIが書いたメールはありがちな詐欺メールよりクリックされやすい結果でした。
日本語が自然なら安全なメールですか
いいえ。生成AIで自然な文面を作れるため、日本語の自然さは安全の目安になりません。
怪しいメールが来たらどうすればいいですか
メールのリンクは押さず、公式アプリやブックマークから自分でサイトを開いて確かめてください。
出典
- Heiding, F., Schneier, B., Vishwanath, A., Bernstein, J., & Park, P. S. (2024). Devising and Detecting Phishing Emails Using Large Language Models. IEEE Access, 12, 42131-42146. https://doi.org/10.1109/ACCESS.2024.3375882
- 警察庁. 「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年3月). https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R7/R07_cyber_jousei.pdf
- フィッシング対策協議会. 「2025/12 フィッシング報告状況」(2026年1月). https://www.antiphishing.jp/report/monthly/202512.html