防犯の心理学

割れ窓理論は本当か。小さな乱れと犯罪の関係を研究で検証

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Window inside an abandoned military building in Fort de la Chartreuse, Liege, Belgium (DSCF3349-hdr)
Photo: Trougnouf / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的統計をAIが調べて整理しました(防犯グッズ・商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

割れ窓理論は「半分は本当」です。小さな乱れが別の違反を呼ぶことは実験で確かめられています。ただし、取り締まりを厳しくするより、住民と一緒に場所をきれいにする方が犯罪は減っていました。

3行でわかる

  1. 落書きやゴミがある場所では、人がルールを破りやすくなることが野外実験で示されています。
  2. 30の検証をまとめたレビューでは、地域で問題を解決する取り組みは犯罪を減らし、強硬な取り締まりは減らしませんでした。
  3. 空き地を整備するだけで、貧困地域の犯罪が13%、侵入窃盗が約22%減ったランダム化実験もあります。

01犯罪者側から見ると何が起きているか

荒れた場所は「ここは誰も見ていない、ルールが守られていない」というサインになります。そのサインが、次の違反を呼び込みます。

割れ窓理論は、割れた窓を放っておくと「誰も気にしていない」と受け取られ、やがて大きな犯罪につながる、という考え方です。

警察庁の防犯サイトも、侵入者は下見のときに地域の様子を見ていると紹介しています。たとえば次のような点です。

02研究と統計でわかっていること

小さな乱れが違反を広げることは実験で確かめられています。対策としては、厳しい取り締まりより、場所をきれいにして人が集まる環境をつくる方が効果がありました。

約2倍落書きやゴミがあると、お金入りの封筒を盗む人が増えた(オランダの野外実験)
30件「乱れ」への対策を検証した研究をまとめたレビューの対象数
-21.9%空き地を整備した貧困地域での侵入窃盗の減少(米国のランダム化実験)
-57.8%整備した空き地の近くの住民が感じる「外出時の不安」の減少

Keizerら(2008, Science)[1][2]

オランダで6つの野外実験を行いました。周りに落書きやゴミがあると、お金入りの封筒を盗む人の数が約2倍になりました。他人のルール違反を目にすると、人は別のルールも破りやすくなります。

対象: 実際の街で通りかかった人 / 限界: 軽い違反を見た実験で、重い犯罪まで同じように広がるとは限りません。

Bragaら(2019, キャンベル共同計画の系統的レビュー)[3]

28の研究に含まれる30の検証をまとめると、「乱れ」への対策は全体として犯罪を小さく、しかし確かに減らしていました。効果があったのは、地域と一緒に問題を解決する取り組み(30件中20件)でした。軽い違反を厳しく取り締まるやり方(10件)では、意味のある減少は見られませんでした。

対象: 93%が米国の研究 / 限界: 警察の取り組みの研究で、住民だけの活動を測ったものではありません。

Branasら(2018, PNAS)[4]

米国フィラデルフィアで541か所の空き地をランダムに分け、ゴミを片付けて草を刈るなどの整備をしました。貧困線を下回る地域では、犯罪全体が13.3%、侵入窃盗が21.9%、銃による暴力が29.1%減りました。近くの住民は、外に出るときの不安が57.8%減ったと答えています。

対象: 541か所の空き地、住民445人、38か月 / 限界: 米国の都市の空き地での結果です。

03お金をかけずに今日からできること

家の周りの「小さな乱れ」を放っておかないことです。片付けとあいさつは、取り締まりより犯罪を減らす方向に働きます。

1

家の前のゴミや落書きをすぐ片付ける

放置すると「誰も気にしていない場所」というサインになります。

所要 5分

2

ゴミは決められた日に出す

警察庁は、ゴミの日が守られていない地域は侵入者に安心感を与えると紹介しています。

所要 0分(習慣だけ)

3

伸びた植木や雑草を整える

見通しが良くなり、手入れされた家に見えます。

所要 30分

4

地域の清掃に一度参加してみる

レビューで効果があったのは、地域と一緒に場所を良くする取り組みでした。顔見知りも増えます。

所要 1時間

04習慣にするコツ

大掃除ではなく、毎週の小さな手入れにすることです。「乱れたまま」の時間を短くするのが目的です。

「自分の家の前くらい、どうでもいい」と思う人は少なくありません。研究は、その小さな手入れが地域全体の空気をつくることを示しています。

家が狙われるときの下見のポイントは「空き巣はどんな家を狙うのか」でまとめています。

05よくある質問

割れ窓理論は本当ですか?

半分は本当です。小さな乱れが別の違反を呼ぶことは、オランダの野外実験で確かめられています。一方で、軽い違反を厳しく取り締まる方法は、30の検証をまとめたレビューで意味のある犯罪の減少を示しませんでした。

ニューヨークの取り締まりで犯罪が減ったのは割れ窓理論のおかげ?

はっきりとは言えません。強硬な取り締まりの研究では効果が確認されず、効果が出たのは地域と一緒に問題を解決する取り組みでした。

個人が家の周りを掃除するだけで意味がありますか?

意味はあると考えられます。空き地を片付けただけで、周りの侵入窃盗が21.9%減った米国の実験があります。家1軒の効果を測った研究ではありませんが、方向は同じです。

落書きやゴミを見つけたらどうすればいい?

自分の敷地ならすぐ片付けます。公共の場所で続く場合は、自治会や市区町村に相談しましょう。身の危険を感じる場面に出会ったら110番です。

出典

  1. Keizer, K., Lindenberg, S., & Steg, L. (2008). The spreading of disorder. Science, 322, 1681-1685. https://doi.org/10.1126/science.1161405
  2. University of Groningen (2010). Kees Keizer の博士論文に関する大学の発表(封筒の盗難が約2倍、歩道清掃を見た人の援助行動が約2倍). https://www.rug.nl/news/2010/10/101110_promotie_kees_keizer_spreading_disorder
  3. Braga, A. A., Welsh, B. C., & Schnell, C. (2019). Disorder policing to reduce crime: A systematic review. Campbell Systematic Reviews, 15(3), e1050. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8356497/
  4. Branas, C. C., et al. (2018). Citywide cluster randomized trial to restore blighted vacant land and its effects on violence, crime, and fear. PNAS, 115, 2946-2951. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5866574/
  5. 警察庁「住まいる防犯110番 侵入者プロファイリング(心理と行動)」. https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki26/theme_a/a_e_1.html