防犯しても犯罪はよそへ移るだけ? 犯罪の転移と「効果の広がり」の研究

防犯をしても、犯罪は「よそへ移るだけ」とは限りません。102件の評価研究をまとめた分析では、犯罪がよそへ移ったのは観察の26%で、逆に周りの地域まで犯罪が減った例が27%ありました。移った場合も、減った分の方が大きい傾向でした。
3行でわかる
- 「防犯しても犯罪は隣に移るだけ」という考えは、研究ではあまり支持されていません。
- 102件の評価研究の574の観察で、犯罪がよそへ移ったのは26%、周りでも減ったのは27%でした。
- ある場所を守ると、近くの場所まで守られる「効果の広がり」の方が起きやすいという実験結果もあります。
01犯罪者側から見ると何が起きているか
犯罪者は、どこでも同じように犯罪ができるわけではありません。慣れた場所、近い場所、条件がそろった場所を選んでいるので、そこが使えなくなると簡単には移れないのです。
侵入窃盗犯は自宅に近い地域ほど犯行を選びやすいことが、3か国の研究で確かめられています。経験のある侵入窃盗犯は、決まった手順と習慣で動いていることも分かっています。
- 知らない地域では、逃げ道や人の目が読めない
- 遠くへ行くほど、時間と手間とリスクが増える
- いつもの手順が通用しない場所では、やり方を変える必要がある
02研究と統計でわかっていること
犯罪の移動は起きることもありますが、多くはありません。むしろ周りまで良くなる「効果の広がり」が、同じくらい、またはそれ以上に見られます。
GueretteとBowers(2009)[1]
場所や状況を変えて犯罪を防ぐ取り組みの評価研究102件を調べました。574の観察のうち、犯罪がよそへ移ったのは26%、周りでも減ったのは27%でした。移動と広がりの両方を測れた13件では、移った分は防いだ効果より小さく、全体として取り組みは有益でした。
対象: 世界各地の評価研究 / 限界: 研究ごとに測り方が違い、すべての移動を捉えられているとは限りません。
Weisburdら(2006)[2]
米国ジャージーシティで、犯罪の多い2か所に集中的な対策を行い、隣の地域を6,000回以上の観察で調べました。犯罪は角を曲がった先に移るのではなく、隣の地域でも減る「効果の広がり」が最も起きやすい結果でした。
対象: 薬物取引や売春が多い街頭 / 限界: 住宅の空き巣ではなく、街頭の犯罪の研究です。
Bragaら(2019, キャンベル共同計画の系統的レビュー)[3]
地域の乱れへの対策をまとめたレビューでも、対策をした場所の周りで犯罪が移るのではなく、防犯の効果が広がる傾向が見られました。
対象: 28研究・30の検証 / 限界: 93%が米国の研究です。
03お金をかけずに今日からできること
自分の家の防犯は、近所に被害を押しつけることにはなりにくいと考えて大丈夫です。さらに、近所と一緒に取り組むほど効果は広がります。
まず自分の家の鍵と明かりを整える
施錠と玄関灯は、費用をかけずにできる基本です。
所要 1分
やったことを近所に話す
「うちは窓も鍵をかけるようにした」と話すだけで、周りの家も見直すきっかけになります。
所要 5分
通り全体の暗い場所や死角を一緒に探す
1軒より通り全体で取り組む方が、見通しと人の目が地域全体に広がります。
所要 30分
04習慣にするコツ
防犯を「自分だけを守る行動」ではなく「地域を守る行動」と考えることです。そう考えると、続ける理由が増えます。
- 近所で被害があったら、自分の家の点検もする。
- 季節ごとに、通りの暗い場所や伸びた植木を見回る。
- 引っ越してきた人に、地域の防犯の取り組みを伝える。
「うちが守りを固めると、隣が狙われるのでは」と心配する人は少なくありません。研究は、その心配より、周りまで守られる効果の方が起きやすいことを示しています。近所のつながりの効果は「近所づきあいは防犯になるのか」で紹介しています。
05よくある質問
防犯をしても犯罪は別の場所に移るだけでは?
そうとは限りません。102件の評価研究の分析では、犯罪がよそへ移ったのは観察の26%で、周りでも犯罪が減った例が27%ありました。移った場合も、防いだ効果の方が大きい傾向でした。
「効果の広がり」とは何ですか?
対策をした場所だけでなく、その周りの地域でも犯罪が減ることです。米国ジャージーシティの研究では、隣の地域でも犯罪が減る結果が最も起きやすいことが示されました。
自分の家だけ守ると、隣の家が狙われませんか?
研究全体では、その心配が現実になることは多くありません。さらに近所と一緒に取り組めば、地域全体が狙われにくくなります。
なぜ犯罪はよそへ移りにくいのですか?
犯罪者は自宅に近い場所や慣れた場所を選ぶ傾向があるためです。知らない場所では逃げ道や人の目が読めず、手間やリスクが増えます。
出典
- Guerette, R. T., & Bowers, K. J. (2009). Assessing the extent of crime displacement and diffusion of benefits: A review of situational crime prevention evaluations. Criminology, 47(4), 1331-1368. https://doi.org/10.1111/j.1745-9125.2009.00177.x
- Weisburd, D., et al. (2006). Does crime just move around the corner? A controlled study of spatial displacement and diffusion of crime control benefits. Criminology, 44(3), 549-592. https://doi.org/10.1111/j.1745-9125.2006.00057.x
- Braga, A. A., Welsh, B. C., & Schnell, C. (2019). Disorder policing to reduce crime: A systematic review. Campbell Systematic Reviews, 15(3), e1050. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8356497/
- Townsley, M., et al. (2015). Burglar target selection: A cross-national comparison. Journal of Research in Crime and Delinquency, 52(1), 3-31. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4361488/