街灯を明るくすると犯罪は減るのか。照明と犯罪の研究

街灯を明るくすると、犯罪は減ります。ニューヨークのランダム化実験では、夜間の屋外の重大犯罪が少なくとも36%減りました。ただし効く理由は「よく見えるから」だけではなさそうです。
3行でわかる
- 街灯の改善は犯罪を減らす、というのが系統的レビューの結論です。
- ニューヨークの実験では、照明を増やした団地で夜間の屋外の重大犯罪が少なくとも36%減りました。
- 昼間の犯罪も同じように減っており、「地域が手入れされている」というサインとして効いている可能性があります。
01犯罪者側から見ると何が起きているか
犯罪者が避けたいのは「見られること」と「顔を覚えられること」です。明るい場所は、その危険が高い場所に見えます。
街灯が犯罪を減らす理由には、2つの説があります。
- 見られる説: 明るいと人目につきやすく、通る人も増えるので、犯行をためらう。
- 手入れのサイン説: 明るい街は「地域が気にかけている」というサインになり、住民の誇りやつながりが強まる。
警察庁も、侵入しにくい環境づくりとして、センサー付きライトの取り付けや、見通しを良くする植栽の剪定を挙げています。
02研究と統計でわかっていること
街灯の改善は犯罪を減らします。ランダム化実験で効果が確かめられ、家の屋外照明も単体で効果の大きい対策でした。
Chalfinら(2022)[1]
ニューヨーク市と協力し、2016年3〜8月に、公営住宅の団地へ仮設の街灯をランダムに割り当てました。照明が増えた団地では、周辺への影響を差し引いても、夜間の屋外の重大犯罪が少なくとも36%減りました。
対象: ニューヨーク市の公営住宅 / 限界: 約半年間の実験で、米国の大都市の団地での結果です。
WelshとFarrington(2008, キャンベル共同計画の系統的レビュー)[2]
街灯の改善は犯罪を有意に減らしていました。一方で、夜の犯罪が昼の犯罪より大きく減ったわけではありませんでした。著者らは、明るさが「見られる」効果よりも、地域の誇りやつながりを高める効果で働いている可能性を指摘しています。
対象: 公共の場所で街灯を改善した評価研究 / 限界: 著者らは、今後は質の高い評価方法と長期の追跡が必要だと述べています。
Tseloniら(2017)[3]
イギリスの2008〜2012年の犯罪調査では、家の防犯対策のうち単体で効果が大きかったのは、屋外の照明とドアの二重ロックでした。
対象: イングランド・ウェールズの全国犯罪調査 / 限界: 日本の住宅にそのまま当てはまるとは限りません。
03お金をかけずに今日からできること
新しく何かを買う前に、今ある明かりを使い、暗い場所を避けることから始めます。
夜は玄関の明かりをつけておく
今ある玄関灯や門灯で十分です。家の屋外照明は、単体でも効果の大きい対策でした。
所要 5秒
明かりの前の植木を整える
照明があっても、枝で影ができると死角になります。
所要 20分
帰り道は明るい道を選ぶ
遠回りでも、街灯と人通りのある道を使います。一度、昼に通勤・通学路の暗い区間を確かめておきます。
所要 15分
切れた街灯は自治会や市区町村に伝える
気づいた人が伝えないと、そのままになりがちです。近くの目印や電柱の番号を控えておくと伝えやすくなります。
所要 5分
04習慣にするコツ
明かりは「つける時刻」を決めてしまうと続きます。暗い道の確認は、季節が変わるたびに一度行えば十分です。
- 日が暮れたら玄関灯、を帰宅や夕食の準備とセットにする。
- 秋から冬は日没が早まるので、衣替えのタイミングで帰り道の暗い区間を見直す。
- 自宅の明かりは、家を守るだけでなく、前の道を通る人の安心にもつながります。
「明るくしても意味があるのか」と感じる人は少なくありません。研究は、明かりが街の空気そのものを変えることを示しています。地域の手入れと犯罪の関係は「割れ窓理論は本当か」でも紹介しています。
05よくある質問
街灯を明るくすると犯罪は本当に減りますか?
減ります。ニューヨークのランダム化実験では、照明を増やした団地で夜間の屋外の重大犯罪が少なくとも36%減りました。系統的レビューでも、街灯の改善は犯罪を有意に減らすという結論です。
明るいと犯人も見やすくなって逆効果では?
研究ではその逆でした。レビューでは昼の犯罪も同じように減っており、明るさが「地域が気にかけている」というサインとして働いている可能性が指摘されています。
家の明かりは一晩中つけておくべき?
必要はありません。玄関灯をつけておく、人が近づくと点く明かりを使う、などで十分です。家の屋外照明は、イギリスの調査で単体でも効果の大きい対策でした。
夜道で不安を感じたらどうすればいい?
明るく人通りのある道に移り、コンビニなど人のいる場所に入りましょう。つけられていると感じたら110番です。緊急でない相談は警察相談専用電話(#9110)にできます。
出典
- Chalfin, A., Hansen, B., Lerner, J., & Parker, L. (2022). Reducing crime through environmental design: Evidence from a randomized experiment of street lighting in New York City. Journal of Quantitative Criminology, 38(1), 127-157. https://www.nber.org/papers/w25798
- Welsh, B. C., & Farrington, D. P. (2008). Effects of improved street lighting on crime. Campbell Systematic Reviews, 4(1). https://doi.org/10.4073/csr.2008.13
- Tseloni, A., Thompson, R., Grove, L., Tilley, N., & Farrell, G. (2017). The effectiveness of burglary security devices. Security Journal, 30(2), 646-664. https://doi.org/10.1057/sj.2014.30
- 警察庁「住まいる防犯110番 手口で見る侵入犯罪の脅威」(侵入しにくい防犯環境の整備). https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki26/theme_a/a_d_1.html