AI時代の防犯

AIチャットに入力してはいけない情報。名前・勤務先・仕事の資料が漏れる仕組みと置き換えのコツ

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パソコンのキーボード
Photo: MichaelMaggs / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的統計をAIが調べて整理しました(防犯グッズ・商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

文章の下書き、メールの返信、履歴書の添削。AIチャットは便利なので、気づくと名前や勤務先、家族のことまで打ち込んでいるかもしれません。入力したものがすぐ誰かに見られるわけではありません。ただ、チャットの履歴には個人情報が1か所にまとまります。名前や番号を置き換えてから入力するだけで、漏れたときの被害を小さくできます。

3行でわかる

  1. AIチャットの履歴には、名前・勤務先・人間関係・居場所がまとまって残ります。アカウントの乗っ取りや事業者側の漏えいがあると、まとめて見られるおそれがあります。
  2. 実際の会話を調べた研究では、個人情報を含む入力の68%に職業、44%に名前、30%に場所が含まれていました。
  3. パスワードやカード番号は入れない、名前は「Aさん」に置き換える、アカウントを二段階認証で守る。この3つはお金をかけずにできます。

01犯罪者側から見ると何が起きているか

犯罪者にとって価値があるのは、名前・勤務先・人間関係がそろった情報です。AIチャットの履歴は、それが1か所にまとまりやすい場所です。

なりすましや詐欺をたくらむ人が欲しいのは、ばらばらの情報ではありません。「誰が、どこで働き、誰と親しいか」がつながった情報です。それがあれば、本人や家族をだます文面に、本物らしさを足せるからです。

AIチャットには、メールの下書きや履歴書の添削など、こうした情報をそのまま貼りつける使い方がよくあります。研究者は、入力された情報が外に出る道として、事業者側のデータ漏えい(サーバーから情報が流出すること)や、会話がAIの学習に使われることを挙げています。[2][3]

もう一つの道は、アカウントの乗っ取りです。パスワードを盗まれると、過去のチャット履歴をまとめて読まれるおそれがあります。パスワードの使い回しが危ない理由はパスワードの使い回しは何が危ないのかで詳しく説明しています。

02研究と統計でわかっていること

実際の会話記録では、メールや書類の作成を頼むときに、名前や職業がそのまま入力されていました。一方で、AIが学習した個人情報を名前から当てられる割合は低いと報告されています。

68%個人情報を含む入力のうち、職業が含まれていた割合(実際の会話15,282件、2026年発表)
44%同、人の名前が含まれていた割合
1.24%名前だけを手がかりに、AIが学習したメールアドレスを当てられた割合(最も高い条件、2022年発表)

Ramírez・Birch・Titov(2026)[2]

一般公開されたAIチャットの会話記録から、個人情報を含む実際の入力15,282件を集めて分析しました。職業が含まれていた入力は68%、人間関係が51%、名前が44%、性別が35%、場所が30%でした。頼みごとの内容で最も多かったのは、メールなど相手に送る文章の作成(53%)でした。

対象: 64言語の入力(英語が55%) / 限界: もともと個人情報を含む入力だけを選んだデータなので、すべての会話の何%に個人情報があるかを示す数字ではない。

Siyanら(2025)[3]

個人情報がはっきり書き込まれやすいのは「就職・ビザなどの申請」「お金や会社の情報」「メールやメッセージの引用」の3種類でした。履歴書をまるごと貼りつける入力もありました。個人情報を伏せてから外部のAIに頼む仕組みを試すと、85.5%の質問で回答の質を保ったまま、個人情報が漏れた割合を7.5%に抑えられました。

対象: 公開された会話記録から選んだ901件 / 限界: 研究用に作った仕組みの評価で、一般の人が手で置き換えた場合の効果を測ったものではない。

Huang・Shao・Chang(2022)[1]

AIが学習データにあった個人情報を覚えているかを、メールアドレス3,238件で調べました。前後の文章を手がかりにすると最大8.80%を言い当てました。名前だけでは最も高い条件でも1.24%でした。研究者は「AIは個人情報を覚えているが、名前と結びつける力は弱く、特定の人の情報が引き出される危険は低い」と結論づけています。

対象: 公開データで学習した研究用のAIモデル(最大27億パラメータ) / 限界: 2022年時点の比較的小さなモデルでの結果で、モデルが大きいほど当たる割合は上がる傾向があった。

ChatGPTの利用者67人へのアンケートでは、79%が名前・住所・電話番号などをチャットで伝えたことはないと答えました。[4] 実際の会話記録の分析とは調べた人も方法も違いますが、「自分は入れていない」と思っていても、メールの下書きや書類の中に個人情報が入りやすいことは覚えておいて損はありません。

03お金をかけずに今日からできること

入れてはいけない情報を決め、名前や番号は置き換えてから入力します。アカウントの守りを固めれば、履歴をまとめて読まれる危険も減らせます。

1

「絶対に入れない情報」を決めておく

パスワード、暗証番号、クレジットカード番号、口座番号、マイナンバー、住所と電話番号のセット。この6つは、どんな頼みごとでも入力しません。

所要 1分

2

名前・会社名を置き換えてから貼りつける

メールや書類を添削してもらうときは、人名を「Aさん」、会社名を「X社」、住所を「〇〇市」に置き換えます。文章の手直しが目的なら、人名が「Aさん」でも頼みごとは伝わります。

所要 2分

3

AIのアカウントを二段階認証で守る

チャット履歴は、アカウントに入られると読まれてしまいます。使い回していないパスワードにし、二段階認証かパスキーを設定します。方法は二段階認証とパスキーの記事にまとめています。

所要 5分

4

設定画面で「学習への利用」と「共有リンク」を確かめる

会話をAIの学習に使うかどうかを選べるサービスがあります。設定画面を開いて確認します。会話を共有リンクで人に見せたときは、不要になったリンクを削除します。

所要 3分

04習慣にするコツ

「人に見られて困るものは、AIにも貼らない」と決めておくことです。迷ったら置き換えてから入力します。

個人情報が漏れて、なりすましや不審な連絡などの被害が出ているときは、警察相談専用電話 #9110 に相談できます。お金を要求されるなど危険を感じたときは、迷わず110番です。

05よくある質問

AIチャットに入力した個人情報は、ほかの人の回答に出てくるの?

研究では、AIは学習した個人情報を覚えていることがあるものの、名前から特定の人の情報を引き出せる割合は低いと報告されています。ただしゼロではありません。住所やカード番号のような情報は、はじめから入力しないのが確実です。

チャットの履歴を削除すれば安心?

削除すれば、アカウントを乗っ取られたときに読まれる履歴は減らせます。ただし事業者側でいつまで保存されるかはサービスごとに違います。削除に頼るより、入力する前に置き換えるほうが確実です。

名前を「Aさん」に置き換えると、回答の質は下がる?

研究用に作られた、個人情報を自動で伏せてからAIに頼む仕組みでは、85.5%の質問で回答の質を保てました。人が手で置き換えた場合の効果を測った研究ではありませんが、文章の添削や言い回しの相談なら、名前が「Aさん」でも頼みごとは伝わります。

出典

  1. Huang J, Shao H, Chang KCC (2022). Are Large Pre-Trained Language Models Leaking Your Personal Information? Findings of the Association for Computational Linguistics: EMNLP 2022, 2038-2047. https://aclanthology.org/2022.findings-emnlp.148/
  2. Ramírez G, Birch A, Titov I (2026). Controlling What You Share: Assessing Language Model Adherence to Privacy Preferences. Findings of the Association for Computational Linguistics: ACL 2026, 40024-40049. https://aclanthology.org/2026.findings-acl.1990/
  3. Siyan L, Raghuram VC, Khattab O, Hirschberg J, Yu Z (2025). PAPILLON: PrivAcy Preservation from Internet-based and Local Language MOdel ENsembles. Proceedings of NAACL 2025 (Volume 1: Long Papers), 3371-3390. https://aclanthology.org/2025.naacl-long.173/
  4. Alkamli S, Alabduljabbar R (2024). Understanding privacy concerns in ChatGPT: A data-driven approach with LDA topic modeling. Heliyon, 10(20), e39087. https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2024.e39087